七十二候

二十四節気 霜降の初候、霜始降（しもはじめてふる）は、10月23日 〜 10月27日あたりになります。朝晩の冷え込みが増し、地面や草木の上に白く霜が降りる光景が見られるようになります。空気が澄みわたり、夜空の星も一層輝きを増すこの時期は、冬の訪れがすぐそこまで来ていることを感じさせます。農村では、霜によって野菜の甘みが増すことから、収穫期の合図ともされてきました。季節の移ろいを肌で感じる、美しい日本の晩秋のひとときです。

二十四節気 寒露の末候、蟋蟀在戸（きりぎりすとにあり）は、10月18日 〜 10月22日あたりになります。「こおろぎが戸口にいる」という意味です。野原で鳴いていたこおろぎたちが、肌寒さを感じて家の軒先や戸口近くへ移動してくる季節を表しています。夜になると、静かな空間に響くこおろぎの声が、秋の深まりと少しの物寂しさを感じさせます。虫の音に耳を傾けながら、過ぎゆく季節を慈しむ、そんな日本人ならではの情緒が息づく時期です。

二十四節気 寒露の次候、菊花開（きくのはなひらく）は、10月13日 〜 10月17日あたりになります。菊は中国から伝わり、日本では古来より不老長寿や厄除けの象徴とされ、重陽の節句（9月9日）や観菊会などでも親しまれてきました。秋の澄んだ空気の中、白や黄色、赤紫などさまざまな色合いの菊が咲き誇り、庭先や公園を彩ります。季節の移ろいとともに、自然の静けさと美しさを感じさせる時期でもあります。

二十四節気 寒露の初候、鴻雁来（こうがんきたる）は、10月8日 〜 10月12日あたりになります。夏の間をシベリアなどの寒冷地で過ごしていた雁（がん）が、日本に飛来する頃を表しています。雁は古来より渡り鳥として人々に季節の変化を知らせてきました。空をV字に編隊を組んで飛ぶ姿は秋の象徴とされ、俳句の季語にも多く登場します。この時期、日本の空は高く澄み、涼風が心地よく、里山や田園に秋の深まりが感じられます。雁の鳴き声が響く空に、秋の静かな気配が広がります。

二十四節気 秋分の末候、水始涸（みずはじめてかるる）は、10月3日 〜 10月7日あたりになります。田んぼの水を抜いて稲刈りの準備を始める時期を意味します。稲の収穫を目前に控え、田の水が引かれ、稲穂が黄金色に揺れる風景が広がります。かつての農村では、自然と共に暮らす人々が一年の恵みに感謝しながら、刈り入れの準備に追われる大切な節目です。気候も次第に秋の深まりを感じさせ、朝晩の冷え込みが強まってくる時期でもあります。自然と人の営みが調和する、美しい日本の原風景を感じられる季節です。

二十四節気 秋分の次候、蟄虫坏戸（むしかくれてとをふさぐ）は、9月28日 〜 10月2日あたりになります。昆虫たちが冬ごもりの準備を始める季節を意味します。「蟄虫」は、土の中や木の根元に暮らす虫たちのこと。「坏戸」は「戸を閉ざす」の意で、虫たちが自らの巣穴の入口を塞いで寒さに備える様子を表しています。自然界が静かに変化していく中、人の暮らしもまた冬への移ろいを感じ始める時期。虫の音も徐々に消え、空気に静けさが漂う、どこか寂しげな季節の一幕です。

二十四節気 秋分の初候、雷乃収声（かみなりすなわちこえをおさむ）は、9月22日 〜 9月26日あたりになります。夏の間に盛んだった雷鳴が、次第に聞こえなくなり、季節が確実に秋へと移り変わっていることを告げる時期です。「雷が声を収める」という表現には、自然の音の変化から季節を感じ取っていた日本人の繊細な感性が表れています。空気が澄みはじめ、空の表情もどこか落ち着きを帯び、虫の音が主役となる季節の到来です。

二十四節気 白露の末候、玄鳥去（つばめさる）は、9月17日 〜 9月21日あたりになります。春に南の国から渡ってきたツバメたちが、子育てを終え、再び南へと旅立っていく時期を表します。「玄鳥（げんちょう）」とはツバメの雅称で、古くから季節の訪れを告げる鳥とされてきました。巣立った雛たちも加わって編隊を組み、長い旅に出る姿には、どこか寂しさと季節の移ろいを感じさせます稲刈り前の静かな田園や、秋空のもとで舞うツバメは、日本の原風景のひとつでもあります。

二十四節気 白露の次候、鶺鴒鳴（せきれいなく）は、9月12日 〜 9月16日あたりになります。この時期になると、セキレイ（鶺鴒）という尾の長い小鳥が姿を見せ、甲高い声で鳴く様子が各地で見られるようになります。セキレイは川辺や田畑に多く生息し、その特徴的な尾の動きと鳴き声が秋の訪れを感じさせてくれます。古来より「夫婦円満の象徴」ともされ、神話にも登場する鳥であり、農村の風景や秋の静かな朝にぴったりの存在です。

二十四節気 白露の初候、草露白（くさのつゆしろし）は、9月7日 〜 9月11日あたりになります。朝夕の空気が冷たくなり、草花に宿る露が光を反射して白く輝いて見えることから、この名がつけられました。夏の終わりから秋への移り変わりが肌で感じられる頃で、朝の散歩では冷んやりとした空気と、草の葉先にきらめく露が印象的です。自然の中にある微細な変化に気づかせてくれる、美しい季節のしるべです。虫の音も高くなり、秋が本格的に始まる気配が漂います。